「変形性膝関節症」という名前を聞いたことのある方は多いと思います。かつては自分には関係ないと思っていた世代の方も、人の寿命が延び超高齢化社会に突入した今、これは身近な疾患の一つとなりつつあります。
変形性膝関節症は、その名の通り「変形を伴う膝関節の疾患」です。主に高齢者に多いですが、原因は骨格の歪みによって膝軟骨が片減りすること。若い人でもO脚やX脚などの傾向がある場合は、軟骨が偏って擦り減り始めます。高齢になると、加齢による機能低下や骨粗しょう症、姿勢の変化などが重なり、さらに膝への負担が増すのです。
軟骨には痛覚がないため、摩耗している間は痛みを感じにくく、気づいた時には進行していることもあります。痛みが現れた時には、軟骨の片減りによって骨同士がたわみ、周囲の軟部組織にダメージを与えているケースが多く見られます。
例えるなら、自動車のタイヤが片減りすると、溝が片側に残っていても走行性能は落ち、まっすぐ走れなくなります。人の身体も同様で、膝軟骨が片減りすると身体のバランスが崩れ、正常な箇所にも影響が及びます。けれどもその原因は、実は「本体側=身体の歪み」にあるのです。
一度変形した軟骨は、タイヤのように交換できるわけではありません。「歪みを整えれば軟骨も元に戻る」と誤解されている方もいますが、すり減ったものは再生しないため、進行する前に予防することが重要です。
予防のためには、本体である身体の歪みを取り除くことが先決です。歪みの要因は様々で、筋力の左右差なら弱い側の筋出力を高めること、姿勢が原因なら生活習慣を改善することが求められます。ネット上には歪みチェック法や簡単な体操法も多く掲載されていますので、軽度であれば試す価値はあるでしょう。
ただし、重度の歪みはそう簡単にはいきません。歪みや捻じれが限界を超えると、軟骨や軟部組織に負担がかかり続け、摩耗を進行させたり、筋肉や関節の拘縮を引き起こします。早期であれば比較的簡単に改善できますが、長期間に渡ると「強直」や「変形」を伴い、完全な回復が難しくなる場合もあります。
このように、歪みや軟骨の摩耗が痛みに発展するにはある程度の時間がかかります。たとえば足をぶつけて痛みを感じるのは一瞬でも、姿勢の崩れが筋膜や筋緊張を引き起こすには時間差があり、数秒~数年単位で進行することもあります。だからこそ、わずかな信号も見逃さず、日頃から健康意識を持つことが大切なのです。