症例:骨盤後傾から前傾へ――姿勢の変化が腰痛を引き起こす?
小学生の頃から通ってくれている子が、久しぶりに腰痛を訴えて来院した。
部活はバスケットボール。部員が少なく、痛みがあっても練習を休めないという。
検査では、前屈で痛みなし・後屈で痛みあり。側屈や回旋では“伸びた側”に痛みが出る。
一見すると筋肉性の痛み。だが、よく見るともう一つ問題が潜んでいた――それが「姿勢」だ。
カルテを見返すと、初診時は“骨盤後傾”と記録されていた。
ところが、今回は明らかに“骨盤前傾”へと変化している。
この姿勢の変化は、成長や生活習慣、運動量の増加などで起こりやすいが、
彼女の場合は、不良姿勢+過度な運動が重なって腰に大きな負担をかけていたのだ。
動きすぎる腰は“不安定”のサイン
骨盤が前傾すると、腰椎が反りやすくなり、関節が“動きすぎる”状態になる。
これを「ハイパーモビリティ」と呼ぶ。
柔らかい=良い、と思いがちだが、実は違う。
動きすぎる関節は支えが効かず、結果として腰の筋肉や靭帯に過剰な負担がかかる。
この状態が続くと、腰椎すべり症・分離症・脊柱管狭窄症などのリスクが高まる。
一方、骨盤が後傾しすぎると、今度は椎間板に圧が集中し、椎間板ヘルニアを招くことも。
つまり、どちらに偏っても危険。理想は「中間位」で、動きと安定が両立している状態だ。
回復の鍵は「柔軟性+支持性」
では、どうすればいいのか。
答えはシンプル――硬い筋肉はゆるめ、弱い筋肉は鍛える。
痛みの原因は“使いすぎた筋肉”だけでなく、“使われなかった筋肉”にもある。
ストレッチで可動域を取り戻し、トレーニングで支える力をつける。
この二つを組み合わせることで、姿勢のバランスは安定していく。
また、痛みがある時期こそ「休む勇気」も必要だ。
身体の声を無視して動き続けると、結果的に回復を遅らせる。
痛みをごまかすより、“なぜその痛みが出たのか”を探る方が、
再発しない身体づくりへの近道になる。
最後に
身体は常に変化している。
成長期、運動量、生活習慣――そのどれもが姿勢に影響を与える。
だからこそ、“今の自分”の状態を正確に知ることが大切だ。
骨盤の角度ひとつで、動きもパフォーマンスも変わる。
腰痛の改善は、姿勢を「整える」ことから始まる。








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